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異彩を、放て。ヘラルボニーが社会に届けるメッセージ

異彩を、放て。ヘラルボニーが社会に届けるメッセージ

2021.07.21

人とモノとの「間」をつなぐ場所としてno-maは様々なコンテンツを発信。今回は、福祉ユニット「ヘラルボニー」を通して、「福祉」と「私たち」との繋がりを考える連載「福祉とわたしの間」をお届けします。

「福祉とわたしの間」連載第1回は、ヘラルボニーCEO松田崇弥氏にブランドストーリーから今後の展望までをインタビューしました。
Profile
ヘラルボニー:異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニット。企業・自治体・団体・個人の課題を洗い出し、仮説を立て、福祉を軸とした社会実験を共創している。障害のあるかたたちをアーティストとして迎え、魅力的なプロダクトを制作したり、囲い壁アートなどさまざまな取り組みを展開。

ヘラルボニーが歩んできたストーリー

ヘラルボニーの事業内容は?

松田崇弥氏(以下、松田氏)
ヘラルボニーは、ライセンスフィーが作家に支払われるアートデータを軸としたビジネスを展開しています。よく、ブランドをやっている会社の印象だと言われるのですが、実はIP(著作権)を取扱っている会社なんです。

日本全国の福祉施設で、アート活動をされている作家さんの作品をスキャンしたり写真に残したりしてデータ化し、アートデータとして現在4,000点以上を預かっています。そのアートデータの著作権を、BtoCでD2Cブランドで展開したり、様々な企業様にライセンスとして使用していただいたり、街づくりに利用していただいています。

ヘラルボニーが生まれたきっかけは?

松田氏
一卵性の双子で会社を経営しています。4つ上の兄が重度の知的障害を伴う自閉症であることから、福祉で何か起業したいと思っていました。

4つ上の兄は、家だと普通に「兄貴」であり、家族みんなすごく仲がいいんです。
けれど、一歩外に出ると世界には“障害者”という枠組みがあって、障害者というのは欠落としてみなされる。また、意図せずにみなしてしまう人もいるということを、漠然と子どもの頃から実感していました。
そういう環境から、昔から知的障害というもののイメージを変えることに非常に興味があり、双子の兄と共にヘラルボニーという福祉実験ユニットを立ち上げました。

「ヘラルボニー」という珍しい響き。名前の由来は?

松田氏
ヘラルボニーという会社名は、4つ上の兄の言葉なんです。兄が小学校時代にいろんな自由帳に書いてあった「ヘラルボニー」という言葉を20歳のころに見つけて。それが印象に残りそのまま会社名にしました。
ノートに書いていあるのは2つ並べた「ヘラルボニーヘラルボニー」の文字で。普段から規則性があったんですが、会社名で2つ並べるのはちょっと長いなと思ってやめたんです(笑)

ヘラルボニーという言葉にはどんな意味があるのでしょうか?

松田氏
実は、「ヘラルボニー」の言葉の意味はよくわからないんです。その時々によって意味が違っていて(笑)

兄が1年半ぐらい前から「馬~!」っていうようになってそれがずっと続いていて、デザイナーさんも同席した打ち合わせでも「馬!」って言っていたので、「あ、今は馬のフェーズなんだ」となりました。なのでロゴは兄の筆跡から馬に寄せたようになってます。
ちょうど1年半前に英字の「HERALBONY」が立ち上がったので、ロゴデザインを馬にしたんですけど、今聞くと「わかんないー!」と言うので、きっと今は馬じゃなくなりましたね。

このロゴでもう商標などを取ってしまったので、来年は「猫!」とか言われたら困ります(笑) 

ヘラルボニーを立ち上げる前は何をされていたんですか?

松田氏
私が通う大学で教鞭をとっていたのが、くまモンの生みの親としても知られる小山薫堂さんで、その方のゼミを受講していました。それから薫堂さんの会社に新卒で入り4年半ほど働き独立しました。なので、もともとクリエイティブ領域ではありましたね。一緒に会社を立ち上げた双子の兄は、ゼネコンで岩手の被災地で再建をしていました。

会社員時代を経て起業。そのきっかけは?

松田氏
私が社会人2年目の時に知的障害者アートに出会い、そこですごい衝撃を受けました。「これすごい面白い!」って。とても新しいチャレンジだし、すごいチャンスだと感じましたが、障害者アートというものはやはり福祉の領域に留まっているのを感じました。
そこで、知的障害×アートをビジネスラインに乗せていけたら面白いんじゃないかと思ったことがはじまりです。

会社におけるご兄弟の役割とは?

松田氏
現在は大きく分けると、私がマーケティング・クリエイティブ周りを担当していて、双子の兄、文登が営業周りを担当しています。

知的障害×アート×ヘラルボニー

著作権を扱うというアイディアはどこからきた?

松田氏
私たちが契約している作家さんのほとんどが重度の知的障害のある方々で、自分でSNSを更新することが非常に……というか、まず難しいんです。
アートはとても面白く自由度の高いカテゴリーですが、知的障害を持つクリエイターたちが“アートで稼ぐ”となると、結構ハードルが高い。
通常、作家さんたちは画廊と契約を結び、定期的に新作を出して個展を開催します。ですが、納期に縛られるという工程自体が、障害を持つ方々にとっては非常に難易度が高いなと感じたんです。
そこで、知的障害者の作家さんたちの“アートデータ”をお預かりすることによって、本人が新作を書き続けなくてもそのアートデータが運用されていくことで作家さんにお金が入り続けるモデルが作れるんじゃないかと考え、それを会社のメイン事業にしようと思いました。

ミッション“異彩を、放て。”に込めた想いとは?

松田氏
D2Cブランドをやっている前職の先輩が、独立するときに「お祝いだからコピーを書くよ」と言ってくださり、私たちの想いを体現したコピー「異彩を、放て。」という言葉を授けてくださりました。

もともと私たちが考えていたことに、自分たちは福祉業界の中に共感を勝ち取りにいくんじゃなくて、福祉業界の外に共感を勝ち取りにいくっていうことがありました。どこに自分たちのスタンスを絞るかっていうのはすごく議論していて。

「福祉」「障害」というカテゴリに括るのではなく、障害=異彩とあえて言い切ることによって、普通じゃないことは可能性であると伝えたかったんです。ある意味、こちらから逆にカテゴライズを強めて発信してしまおうというところで生まれた言葉が「異彩を、放て」というコピーなんです。

バリュー「アソブ、フクシ」 3つの項目を掲げた意味は?

-1. 福祉領域を、拡張しよう。
-2. 多者の視点で、思考しよう。
-3. クリエイティブに、はみだそう。
松田氏
「福祉領域を、拡張しよう」は、“福祉実験ユニットヘラルボニー”のことを言っています。実験という言葉を使ったことにも理由があって。福祉という領域は、間違うことが許されないような村社会っぽい空気を感じることがあります。そういう現実を前提にしたとき、自分たちが失敗も成功も含めてどんどん挑戦し、実験を見せていくようなことがやれたらなと思ったんです。

「福祉領域を、拡張しよう」という言葉も同じ想いがあって、福祉=チャレンジしづらいような雰囲気があるけれど、自分たちが様々な可能性があるんだよというのを提示して拡張できる存在になれたらいいなと思い、福祉領域を拡張するという項目を1つ目に掲げました。
「多者の視点で思考しよう」には、特別な想いがあります。まず、クライアントさんよりも福祉施設の方に配慮する、ということを会社の中で定めています。万が一ミスが起きたとしても福祉施設側を急かすのではなく、クライアントさんに「間に合いませんでした」と素直に謝るという順番も、会社の中で決まっています。

ヘラルボニーはいろいろな人たちと創り上げている事業で、福祉施設も、作家さんも、作家さんの親も、クライアントさんも含めて、みんなで一丸となってやっていきましょうという想いがあります。資本主義だけの視点で、売れる売れないだけで判断していくと、この事業はきついところも多々あったりするので……。関わっているたくさんの人たちのことを考えて、「いろいろな視点で思考しよう」という考えを大切にしています。

福祉を身近なものに

福祉と私たちの間にある問題点とは?

松田氏
最近だとSDGs、ダイバーシティ、インクルージョンなど様々な言葉が出てきて、そういった言葉がそのジャンルの人たちのことを理解しましょうという前提になっているのは、個人的にすごく息苦しいなと感じています。
自分だったら、知的障害のある人たちを理解しましょう!となったとしても、東京も田舎もですが、重度の知的障害のある人と普段接点がほとんどないのに、理解することって難易度が高すぎるなぁと……。

それよりも「認知が広がること・知ること」の方が、今のフェーズに大切だなと思います。
ヘラルボニーというブランドを通じて、障害や知的障害って、なんなんだろう?というのがみなさんに広がっていけばいいなと思いますし、まずは「知る」ことが何よりも大切だと思っていて。
例えば、重度の知的障害の人たちには、それぞれすごいこだわりがあることが世間に知られることによって、もしかすると国の制度が変わるかもしれないし、何かモノをつくる時にそういう人たちの視点入れたらいいんじゃないかという意見が出てくるかもしれないし。

認知が広がるだけで、世の中のハードやソフト面が少しずつ変わっていくんじゃないかなと思っています。ヘラルボニーとして、まず“知らせる”というのを大切にしたいなと、今話していて改めて思いました。

松田さんが考える、ヘラルボニーの存在意義とは?

松田氏
障害のある人たちが福祉施設に通っているということは、ぼんやりみんなわかっていますよね。“支援されないと生きるのが難しい人たち”ということも、間違いじゃない。
実際に、うちの兄も福祉施設がなかったら本当に大変だと思うので、そう思うことは間違いじゃないんです。ですが、そうとは思いつつも、知的障害者のたちが尊敬されるべき点を創り出したいというのはあります。

ただ支援が必要な人という理解ではなくて、重度の知的障害がある自閉症やダウン症といわれる人たちは、脳の特性があって、ひたすらひとつの物事を集中してやれる力があって。
ひとつの物事をやりきる力が、ひとつのモチーフをひたすら羅列させ、それがアートになるというように。脳の特性によって、こんなに素敵な、その人だけの色がひしめく作品が生まれていると思うんです。
知的障害者の方たちのそう言ったストーリーが認知されていくことで、そういう一面もあることがみなさんに伝わるということがすごく大事かなと思っています。
私の母校でも、障害=欠落としてみなされる風土の中学校だったので、自閉症スペクトラムを略して「スぺト」、身体障害のある人たちを略して「しんしょ」と言われていました。そういうことが、ヘラルボニーが有名なり、知的障害者の方たちの個性が理解され、そういう世界もあるということがみなさんに広がれば、知的障害=欠落の対象として揶揄されることもなくなるはず。

ヘラルボニーの存在が、そういう役割になったらいいなと思っています。

ヘラルボニーだけの魅力とは?

松田氏
最近、人に感謝されるという機会がものすごく増えました。ヘラルボニーの知名度が少しずつ上がってきて、プロダクトが売れたりメディアに取り上げられ、ブランドも少しずつ認知されてきたという感覚と同時に、それ以上に人に感謝されることが本当に増えました。

アーティストさんの親御さんから感謝のメールをたくさんいただきますし、「こういうブランド作ってくれてありがとう」と言われることが多々あります。
きっと、ただただブランドやっているだけでは得られなかった経験で、“ハッピーの循環”がリアルに起こっていると感じることがあります。そういう意味では、自分にとっても、こんな小さなブランドなのに働いてくれているメンバーにとっても、目標を達成して喜ぶ以外のリターンがある会社や環境はなかなかないんじゃないかと思います。

それから、「これってなんのためにやるんだっけ?」ということが、会社を創ってから一度もないなと。ヘラルボニーが認知されることによってそこに広がる世界が見えているので、「何のためにやるんだっけ?」という疑問が起きないのは、本当に幸せなことかもしれないと、最近思うようになりました。

ヘラルボニーの今後の展望は?

松田氏
これからライフスタイルのラインも始まることになっているので、ソファーやクッション、壁紙などのライフスタイルに関わるプロダクトをどんどん作っていきます。それを、まずは一生懸命頑張りたいと思っています!

注目しているD2Cブランドは?

松田氏
最近面白いなと思ったのは、レナクナッタさん。作れなくなったという意味の「れなくなった」、あとはイタリアの言葉も混じっているんだとか。
レナクナッタさんは、デッドストックの生地や雑布を工場からもらって、それを巻きスカートなどのプロダクトにアップサイクルをしているブランドさんで、「文化を纏う」をテーマにやっていてとても面白いなと思いました。ほとんどが予約販売になっていて、在庫ロスをなくすという取り組みもしています。

どんどん売るビジネスからは逆行する感じはありますが、逆にD2Cだからこそできるモデルだと思っていて、参考になりました。

読者のみなさんにメッセージをどうぞ!

松田氏
ヘラルボニーのウェブサイトをぜひご覧いただきたいです!将来的に、そのアートを創った作家自体にファンを増やしていきたいと思っているので、ウェブサイトでは、商品名を全て作家名が先にくるように記載しています。

MIDORI KUDO「(無題)」(青)|ART SCARF
¥8,800

MICHIYO YAEGASHI「ワープロ」|ART NECKTIE
¥24,200

MINAMI TAKAHASHI「風のロンド」|ART HANDKERCHIEF
¥2,750

SATORU KOBAYASHI「数字」|ART ECO BAG
¥2,420

BYGAKU 「BLUE YELLOW WHITE STRIPE」|ART T-SHIRT
¥6,930

ぜひ、商品をご覧いただくときには、商品を見るよりも作風で見て、どの作風が好きか、絵画を選ぶような感覚でプロダクトを手にとってもらえたらと思っております。

あとはPOPOUPイベントがありますので、ぜひno-maにお越しください!

ヘラルボニー代表取締役社長 松田崇弥

小山薫堂が率いる企画会社オレンジ・アンド・パートナーズ、プランナーを経て独立。4歳上の兄・翔太が小学校時代に記していた謎の言葉「ヘラルボニー」を社名に、双子の松田文登と共にヘラルボニーを設立。異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニットを通じて、福祉領域のアップデートに挑む。ヘラルボニーのクリエイティブを統括。東京都在住。双子の弟。日本を変える30歳未満の30人「Forbes 30 UNDER 30 JAPAN」受賞。

編集後記:社会課題としての「福祉」は誰もが認識していることですが、身近にあるにも関わらず自分ゴトできないという人も多いのが現実です。ヘラルボニーさんのストーリーを通して、「福祉」と「わたしたち」について考える1つのきっかけになれば幸いです。
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