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HERALBONYができるまで - プロダクトのお話 - 「福祉とわたしの間 vol.2」

HERALBONYができるまで - プロダクトのお話 - 「福祉とわたしの間 vol.2」

2021.07.21

人とモノとの「間」をつなぐ場所としてno-maは様々なコンテンツを発信。今回は、福祉実験ユニット「ヘラルボニー」を通して、「福祉」と「私たち」との繋がりを考える連載「福祉とわたしの間」をお届けします。

「福祉とわたしの間」連載第2回は、ヘラルボニー取締役、チーフ・クリエイティブ・オフィサー、そしてアートライフブランド「HERALBONY」を統括し、自らもファッションデザイナーとして活躍される佐々木春樹さんが登場。「HERALBONY」の魅力溢れるプロダクトができるまでを語っていただきました。

取締役/チーフ・クリエイティブ・オフィサー 佐々木春樹

ファッションデザイナー。文化服装学院アパレルデザイン科在籍中より『TSUMORI CHISATO』でアシスタントデザイナーとして働く。その後、15年以上に渡り ”大人げない大人の服”『FRAPBOIS(フラボア)』のデザイナーを歴任。アパレル全般の深い見識に限らず、サステナブル領域にも精通。アートライフブランド「HERALBONY」を統括。

現在のご担当とお仕事の内容は?

佐々木春樹氏(以下、佐々木氏)
ヘラルボニーでは取締役/チーフクリエイティブオフィサーとして、プロダクトのデザイン・プロデュースから店舗プロデュースまでブランドのクリエイティブ全般を担当しています。

プロダクトの企画構想から商品化までの流れとは?

佐々木氏
ヘラルボニーは、ネクタイのプロダクトからスタートしたブランドなんです。
どのプロダクトも、基本的にアートが活きるように制作していて、サステナブルな素材を使用したり環境にいいものを中心に作っています。

私自身、ファッションデザイナーとして20年ほどやってきましたが、デザイン=季節で消費されるものという現状があります。ですが、「HERALBONY」は、消費されないプロダクトを目指しています。
例えば、プロダクトの中には財布やマスク、カードケースなど様々な種類がありますが、どれも“アートウォレット”、“アートカードケース”、“アートマスク”……というように、あえて頭に「アート」を付けています。

ファッション=消費されるものという考えが今の世界には根付いていて、デザインもどんどん陳腐化していきます。常に動きのサイクルの中で作られるものがファッションですが、「アート」と名付けることによって、消費の対象から外したかったのです。

「HERALBONY」は、消費のサイクルに乗らないプロダクトをデザインし、頭に「アート」と付けることで、「これは一般のプロダクトではなくて“アート作品なんだよ”と訴えかけている。そうすることで、アートに対しての尊敬や畏敬が生まれてくると思うので、そういった商品づくりを進めています。

プロダクトの企画〜店頭に並ぶまでの時間は?

佐々木氏
大体半年ぐらいです。例えば、財布は浅草にいる1人の職人さんが手作業で仕上げてくださっています。
コースターは、元々はマヨネーズ工場で出た卵の殻を使っています。卵は、中身はマヨネーズに使われていて、内膜は化粧品になりますが、殻だけは捨てられいます。その廃棄されてきた殻を回収して、殻と土を一緒に焼いてコースターに生まれ変わらせています。
卵の殻は、中にいる雛が空気を吸えるよう表面に空気の穴が無数に空いていて、その穴に水が吸収されるという機能を持っているので、このコースターは珪藻土と同様の機能を持ち、水を吸収する機能も備わっています。
このように、本来捨てるようなものをアップサイクルして魅力的なプロダクトを創り出したいと思っています。
扇子は「FANO」というブランドとのコラボレーションです。広島の原爆ドームに毎年、世界中から何万羽と送られてくる折り鶴の紙を溶かしてアップサイクルしています。
高級寝具に使われるような肌触りのいい素材から作られているマスクは、燃やしても有害な物質が発生しません。

「HERALBONY」のプロダクトはすべて、サステナブルなものと深く結びつけてデザインされてます。サステナブルなもので創ることにこだわり、高品質かつ持続可能なプロダクトを創り出す意識をもっています。

デザインを絞って展開している理由は?

佐々木氏
「HERALBONY」は将来的に世界の一流ブランドを目指しています。ハイブランドを思い浮かべたときに柄が容易に想像できますよね。アート作品を絞ることによって、「HERALBONYの柄」と想起できることが重要だと思っています。

現在、契約した作品が全国に4,000点ほどあるのですが、そのうちの20作品ほど選んでこちらのプロダクトに落としてこんでいます。「あ、HERALBONYってあの黒丸の柄だよね」「青い点々の柄だよね」と、世界中のみなさんがすぐデザインイメージが湧くようにブランディングしました。
きっとブランドが成長するにしたがって、ファンの方も「HERALBONY」の柄を認知して、例えばエコバッグをもった人が街で歩いていたら、「あ、HERALBONYだ!」と気付いてくれたりするかもしれない。私自身は、「HERALBONY」がそういう存在になるといいなと思いながら、プロダクトを考えています。

もし「HERALBONY」がパリに出たり、中国・アメリカに進出したりするブランドになっていけば、パリの知的障害を持つ作家さんのアート作品を扱って、「パリのHERALBONYの柄」になっていくはずだし、今後の行く道を見据えながら、20作品を展開しブランディングをしています。

プロダクトに共通する基準とは?

実は、私たちは英字の「HERALBONY」とカタカナの「ヘラルボニー」で分けて取り組んでいます。カタカナの「ヘラルボニー」は、社会に実装していろいろな方々が見るものと捉えていて、英字の「HERALBONY」は最高品質のものを届ける、という基準でものづくりをしています。最高なものを発信しみなさんに届けることで、福祉のもの=安いというイメージの変容も兼ねています。
特に、私が担当する「HERALBONY」では、最高品質のものにこだわり生地から持ち手まですべてオリジナルでデザインしています。持ち手の部分は楓の木を使用していますが、形状・持ちやすい長さ・収納する際の形状やロゴの見え方まで、全てを独自で考え試行錯誤を重ねています。
ここはバックサテンと言い、サテン生地を裏側に使って裏面にプリントを施し広げる内側まで美しい傘になっています。このように、1点1点がオリジナルデザインであり、こだわりを尽くして作っています。他のブランドにも負けないプロダクトを提案できるよう、常に最高品質のプロダクトを提供することを目指しています。

商品にこめる想い、こだわりとは?

アートが基準なので、いかに美しくアートを見せれるかという点は、苦労というか1番こだわっています。例えば、シルクのジャガード織りで作られたネクタイは、通常プリントで再現する部分を“織り”で再現しているため、繊細で美しいアート作品の世界観を非常に細かいところまで表現しています。
プロダクトに落とし込むときに、もともとの基準であるアートの世界観を忠実に再現しないといけない。例えば、このネクタイはクレヨンで描いているアートなのですが、サテン生地にクレヨンのかすれ具合を再現しています。やはり、いかにアートが美しく映えるかということは常にこだわっています。
これは、Iroseとコラボレーションしたアートウォレットとカードケースです。素材は牛皮なのですが、皮の上に白を3回塗ってからプリントしています。普通の工程に比べるとはるかに時間と手間をかけてやっているということは間違いないですね。

プロダクト開発時に難航したり苦労した点とは?

佐々木氏
今までの20年間、私はファッションデザイナーとして、自分の世界観を発信するためにデザインしてプロダクトを作ってきました。ただ、このヘラルボニーに関しては、ものづくりの軸は「私」よりもアーティストさんやそのご家族という、もっと大事なものが明確に存在します。彼らが喜ぶもの、その先にいる商品を買うみなさんが喜ぶもの、関わる人たちみなさんが喜ぶものを作りたいと思うようになりました。
最近、プロダクトを購入されたお客様がその作家さんの背景を知って、「素晴らしいアートをありがとう」と手紙を出してくれたという出来事がありました。そういうときに、ヘラルボニーのアイテムが架け橋になり、私たちが創り出したものがハブになっているという実感がありました。

主役は自分ではなく、アーティストさんがいて、私が今までの知見や経験をもとに良いプロダクトにして、それをお客様が買うことによって“ハッピーの循環”が生まれる。さらにその先にいるアーティストもハッピーになって……。ヘラルボニーを通して、私自身が純粋にハブになっていることが、とても幸せだと感じています。自分は前面に出る必要はない。ヘラルボニーを経由して、そういった交流なり感情の循環がたくさん生まれるといいなと思っています。
佐々木氏
「サスティナブル」という考え方は、ファッションの世界では「サーキュラーエコノミー」とも言います。作る時点から終わるところまで想像して、役目を終えた後に再生させてまた新しいものを作ることがサーキュラーエコノミーの考え方になります。

まだ私たちヘラルボニーはそこまでには至っていないのですが、こういったアートを掲載したあとにプロダクトにして販売するというのが、サーキュラーエコノミーの循環の1つでもあります。アートを使ったプロダクトを制作するだけに留まらず、“ハッピーのサーキュラー(循環)”が、やはりヘラルボニーの最大の強みだと思います。

今後のプロダクトの構想について教えてください

佐々木氏
今、高品質でみなさんに喜んでもらえるもの作りたいと思っていて、様々なプロダクトを準備しているところです。例えば、スニーカーやスカーフ。

今は綿で作っていますが、次はシルクのスカーフを出したいと思っていますし、スニーカーなら1点1点サイズやデザインなどもオーダーできるようにしつつも、無駄が出ないような座組で環境にもアーティストにも消費者にも良いものづくりができればいいなと考えています。理想ですが、実現できるようにしたいと思っています。

佐々木さんが考えるヘラルボニーの魅力は?

佐々木氏
ヘラルボニーの魅力は、いちブランドでもないしいち会社でもないというか。全てを総合的にやれるのが強味だと思っています。

ポップアップに出店してこんな風にプロダクトを販売もするけれど、同時にストーリーもみなさんに伝える。作家さんやお客様への“ハッピーの循環”を与えることもできてきていて、そういったものを総合的にやれる場所になってきています。社会に向けては、知的障害を持った方々たちのアート作品がプロダクトになって届くという、全体にサーキュラ―がまわせている環境はとても幸せなことであると感じています。

このように、社会とビジネスを含めてトータルで提案できる会社はなかなかないと思うので、そういったところにヘラルボニーの魅力があると思います。
Profile
ヘラルボニー:異彩を、放て。をミッションに掲げる福祉実験ユニット。企業・自治体・団体・個人の課題を洗い出し、仮説を立て、福祉を軸とした社会実験を共創している。障害のあるかたたちをアーティストとして迎え、魅力的なプロダクトを制作したり、囲い壁アートなどさまざまな取り組みを展開。
「福祉とわたしの間」第一回:異彩を、放て。ヘラルボニーが社会に届けるメッセージはこちらから!
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